水うちわハチドリ
今年の夏に初めて制作・販売した水うちわハチドリ。多くの方にお選びいただき、ありがとうございました。以前から憧れいつか持ちたいと願っていた美しい岐阜の工芸品水うちわを、まさか作ることができるとは思ってもいませんでした。水うちわは、何人もの日本の職人の手を経て作られ生産数が限られているため、オリジナルアイテムを作ることは難しいのですが、ご了承いただいた水うちわ製造元の家田紙工さん、そして家田紙工さんとご縁を繋いでいただいた美濃和紙の伝統工芸士コルソヤードさんに心から感謝しています。
水うちわハチドリの柄の先には、BASEYの途上国のパートナーが作るシェルとホーンのチャームを添えました。パールシェルはタンザニアの美しい海から、牛のホーンはルワンダの力強い大地から、約12,000kmの距離を旅して日本に届きます。ホーンは、廃棄される食用の牛の角を活用し、ルワンダの青年たちが手作業で一つずつ丁寧に研磨をしています。そしてタンザニアのシェルは、乱獲やダイナマイト漁が問題となっている海で、漁業に過渡に頼ることなく生活が営めるように、BASEYのパートナーが貝を養殖し加工しています。アフリカ工芸が岐阜の工芸品とコラボレーションしたのは恐らく初めてで、きっとシェルもホーンも、そして水うちわも驚いたのではと思います。
今回の水うちわハチドリのデザインは、いつもグラフィックデザインの力でBASEYを支えてくだるTremolo Designのグラフィックデザイナー山中さんにご協力いただきました。山中さんはBASEYのアイディア、デザインや想いを、期待以上の形に仕上げてくれる大切なパートナーです。今回は、ハチドリが美しく羽ばたき、地球にしずくを落とす様子をデザインしました。
今回なぜハチドリを描いたかというと、BASEYの名前にあります。BASEYの名前の”BASE”は野球の塁”BASE”から来ていて、自身に与えられた場所や立場で最善を尽くすという思いが、野球の塁に繋がりBASEYの名前の由来になりました。一言で言うと「一隅を照らす」想い、それが文化人類学者であり環境運動家の辻信一さんが翻訳された南米エクアドルに伝わる小さなハチドリの物語を思い出させました。
辻信一さんのご了解を得て、この場でその物語をご紹介します。
「ハチドリのひとしずく」
森が燃えていました。
森の生き物たちはわれさきにと逃げていきました。
でもクリキンディという名のハチドリだけは行ったり来たり口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます。
動物たちはそれを見て「そんなことをしていったい何になるんだ」と笑います。
クリキンディはこう答えました。
「私は、私にできることをしているだけ」。
本当に短い物語。でも温かい思いが胸にきます。
BASEYが途上国のパートナーにできることは、活動を続けパートナーに仕事を作り続けること。小さくゆっくりな歩みかもしれないけれど共に歩み、共に成長することが、ご縁で繋がり出会い彼らからもらった幸せや元気、笑顔を彼らにお返しできる方法だと思っています。それがBASEYにとってできる一隅を照らす思い、ハチドリのひとしずくだと考えています。
そして、その想いを形にしたくて、岐阜の美しい工芸品水うちわにハチドリを表現しました。
今年5月に開催された世界フェアトレードデー名古屋では、尊敬する辻信一さんに水うちわハチドリをご覧いただくことができました。「日本の伝統、そして途上国のパートナーへの想い両方を大切にして、水うちわで繋ぎ幸せが広がっている。素晴らしいハチドリの取り組みだね。」と嬉しいお言葉をいただき、今もその言葉が力になっています。
これからもBASEYにできる「ハチドリのひとしずく」を大切にしながら、パートナーと共に歩んでいきます。
水うちわハチドリを応援、お選びいただいた皆さま、本当にありがとうございました。
吉井 由美子